カイガラムシは、さまざまな植物に固着して栄養を吸汁し、植物を生育不良にします。排泄物の上には「すす病」が起こりやすく、寄生場所は「こうやく病」発生の原因になるとされています。
カイガラムシの成虫は、ロウ物質の殻で覆われているので退治が難しいです。カイガラムシから大切な植物を守るのに悩んでいる方は多いしょう。
この記事では、カイガラムシの卵、幼虫、成虫ごとに駆除方法を紹介します。
また、カイガラムシの生態や発生する原因と対策についても説明していますので、ぜひ最後まで読んでカイガラムシ駆除の参考にしてください。

カイガラムシの成長過程別駆除方法

カイガラムシの駆除は、卵、幼虫、成虫と成長過程別に適した駆除方法があります。カイガラムシの状態を確認してから効果的な防除をしましょう。

カイガラムシの卵を駆除する

カイガラムシの卵はとても小さいため、見つけるのは難しいとされています。また殻で覆われているため殺虫剤は効かないです。
カイガラムシの卵を見つけたら、植物を傷つけないように注意しながら、卵を拭き取りましょう。地面に落としただけでは、カイガラムシの卵は孵化しますから、袋などに入れて処分してください。

カイガラムシの幼虫を駆除する

カイガラムシは、卵や成虫のように殻で覆われていない幼虫のときが一番駆除しやすいです。カイガラムシの幼虫の駆除で、よくある方法を3つ紹介します。
・殺虫剤で駆除する
直接散布であればスミチオン、土に撒くタイプならオルトランがおすすめです。用法・用量さえ守れば、植物へのダメージは最低限で効果を発揮します。
・牛乳やマシン脂で駆除する
薬剤を使いたくないという方は、スプレーボトルなどを使って牛乳やマシン油を吹き付けましょう。牛乳やマシン油が膜となってカイガラムシを覆い窒息させて駆除します。
・木酢液で駆除する
木酢液は、炭を作る際に出る水蒸気を冷やして液体にしたもので、原液ではなく希釈してスプレー散布します。自然由来の成分ですが、殺虫効果の評価は高いです。

カイガラムシの成虫を駆除する

カイガラムシの成虫は、硬い殻で覆われているので殺虫剤は効きません。歯ブラシなどを使って、植物から擦り落とすしかないです。
カイガラムシの成虫はしっかりと植物に固着していることが多いので、かための歯ブラシで取れてこないときはヘラなどでこすってみてください。
とにかく擦って駆除するときのポイントは、植物をいかに傷つけないようにするかです。擦りながら、もう一方の手は枝葉に添えてサポートしましょう。

カイガラムシの生態を知って駆除する

カイガラムシの生態を知っておくことは、効果的に駆除を行うための基本になります。カイガラムシの種類、発生時期、つきやすい植物について説明します。

カイガラムシの種類は?

カイガラムシは、日本だけでも約400種類が報告されています。
吸汁して生育するカイガラムシは基本的に雌です。交尾の季節や、植物が枯れそうになって移動する必要があるときに翅をもった雄が現れます。全く雄が見つからず、単為生殖しているとされる種類も多いです。
マルカイガラムシ類、カキカイガラムシ類、ロウムシ類は、成虫になると脚が退化して枝や葉に固着します。
フクロカイガラムシ類、コナカイガラムシ類は、成虫になっても歩き回る種類で、殻がなく白い粉状や綿状の分泌物に覆われています。

カイガラムシの発生時期

カイガラムシの多くは、雌が卵を胎内で孵化させて子を産む繁殖方法です。発生時期は、5~7月頃です。外気温が高くなる8月に繁殖をはじめ、9月の上旬には成虫になります。
成長周期は種類によって違いますが、目安としては、交尾から産卵まで12日、卵から孵化までが7日、孵化から成虫になるまでで24日ほどです。ほとんどのカイガラムシの寿命は1年以下とされています。

カイガラムシがつきやすい植物

カイガラムシは、さまざまな植物につきますが、特にみかんやレモンなどの柑橘系の樹木に付きやすいです。葉や枝、果実に付いて吸汁します。
その他、ナンテン、ビワ、カキ、ツバキなどにも付きます。
カイガラムシは、風通しが悪く湿度が高い場所で発生しやすく、新梢や新葉の出方が悪くなります。樹木は適切に剪定を行い、常に風通しの良い状態しておくと、カイガラムシは付きにくいです。

カイガラムシが発生する原因と対策

カイガラムシは種類が多く、成長周期によって形態も違うため対処の難しい害虫ですが、代表的な発生原因と対策、予防に効く薬剤について紹介します。これだけ覚えておけば、大きな失敗はないはずです。

カイガラムシが発生する原因

カイガラムシの発生の原因としては、繁殖によるもの、風による媒介、人の着衣などに付着して侵入するなどが考えられます。繁殖しやすい環境としては、温暖で湿度の高い場所です。また窒素が過剰で軟らかい植物を好みます。
カイガラムシは、卵も成虫もロウ物質で覆われていますから殺虫剤は効きません。殺虫剤での駆除を目指すのであれば、幼虫の時期を狙いましょう。

カイガラムシを発生させないための対策

薬剤に弱いカイガラムシの幼虫は、5月~7月に活動が活発になるので、殺虫剤を月に2~3回の頻度で丁寧に散布しましょう。駆除したカイガラムシはビニール袋などに入れて処分し、使った道具や作業中に着ていた衣服は、洗浄・除菌することをおすすめします。
カイガラムシが一度付いた枝葉は、駆除したはずなのに、また同じように発生してしまうことがあります。可能であれば、枝葉ごと剪定して処分するというのも選択肢の一つです。

カイガラムシに効く薬剤のまとめ

カイガラムシに効くと評価が高く、一般の方にも使いやすい薬剤を5つ紹介しますので参考にしてください。
・マシン油乳剤(キング95マシン)
マシン油乳剤(キング95マシン)は、通常の薬剤では駆除が難しいカイガラムシ類の成虫やハダニ類に効果を発揮する薬剤です。害虫を油膜で覆い窒息死させて駆除します。
・カダンK
カダンKは、油膜でカイガラムシを覆うことで駆除するスプレータイプの専用薬です。特にバラに発生することが多いシロカイガラムシへの効果が高いです。ただ最高気温が20℃を超えると枝葉焼けが起きるので使用できません。
・GFオルトラン液剤
GFオルトラン液剤は葉や根から吸収され、植物全体にゆきわたり効果が持続する優れた移行性殺虫剤であり、広範囲の害虫に対して効果を発揮する害虫防除薬です。
・スミチオン乳剤
スミチオン乳剤は、害虫が薬剤に触れたり薬剤が付着した植物を食べたりすることによって効果を発揮する薬剤で、植物内に侵入した害虫にも有効とされます。
・トレボン乳剤
トレボン乳剤は、人や動物に優しいとされる低毒性の殺虫剤です。速効性と残効性に優れ、水稲、野菜、花き類、樹木類など幅広い植物で使用可能です。