剪定とは、樹木の枝を切り落としたり葉先を揃えたりする作業です。
植木の散髪のように、見た目だけの問題のイメージがあるかもしれませんが、剪定は樹木の健康にも影響を与える大切な役割も担っています。
大胆に枝を切り落とす「強剪定」や繊細な作業となる「軽剪定」など、剪定の種類はさまざまあり、それぞれに応じた適した季節も異なります。
この記事では剪定方法の種類別に、目的と注意点、そして各種剪定方法に適した時期を紹介していきます。
庭木の剪定は大きく分けると2種類。強剪定と軽剪定。
剪定にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると次の2種類です。
・強剪定
・軽剪定
強剪定は「基本剪定」や「冬剪定」とも呼ばれ、主に寒い時期に行われます。
一方、軽剪定は別名「夏剪定」といい、暑い時期に行われることが一般的です。
なお、勘違いされる方が多いのですが、上記は適期というだけであって、春や秋にはどちらの剪定方法も可能です。
まずは強剪定について、詳しく解説していきます。
強剪定(基本剪定)とは?目的と剪定方法
強剪定とは、大きな枝を切り落としたり、場合によっては幹を切ったりもする比較的大胆な剪定です。
よく冬や春先に街路樹が枝をバッサリ切り落とされていることがありますが、あれは強剪定を施されたもの。
剪定後の姿が以前と大きく変わるのは、強剪定の特徴のひとつです。
太い枝を多く切り落とすため、強剪定後の樹木には大きな切り口がたくさんできてしまいます。葉がほとんど残りません。
つまり強剪定は、樹木にとっては外科手術ともいえる、大きなダメージとなる作業といえるでしょう。
樹木にとってストレスとなりそうな強剪定を行うのは、どんな目的があるからでしょうか?
強剪定の目的と注意点
強剪定は、次のような目的で行われます。
・樹木の高さや形を調整する
・栄養を全ての枝にいきわたらせる
・生育を促進する
植木が大きくなりすぎて見映えが悪くなったり、道路にはみ出して近所迷惑になったりするときは、強剪定で高さや大きさを調整します。
また、枝が多くなりすぎると栄養が樹木全体にいきわたりません。不要な枝を定期的に取り除くことで、樹木は健康になり、花や果実がしっかり育ちます。
しかし、不要な枝とはいえ多くの枝を切り落とされる強剪定は、樹木にとっては負担の多い作業。切り口から病気や害虫が入り込むことも考えられるため、傷口を回復するための体力がある時期に行うことが鉄則です。
強剪定に適した時期
樹木への負担が大きな強剪定は、基本的には冬に行います。なぜなら、冬は植物にとって休眠期、つまり、あまり生長しない時期だからです。
休眠期なら大胆な剪定を行っても樹木に大きなダメージ与えずにすみ、傷口の回復も早くなります。
とはいえ、冬ならいつでも適期なわけでもありません。強剪定に適した時期は、樹木の種類によって異なります。
常緑性広葉樹
カシノキやツバキ、オリーブの木、キンモクセイのような常緑性広葉樹は、寒さに弱い植物です。真冬に強剪定を行うと、ダメージから回復できずに枯れてしまうことがあります。
常緑性広葉樹の強剪定は、新芽が出始める3~4月頃、または新芽が落ち着いた5~6月頃に行いましょう。
常緑性針葉樹
常緑性針葉樹とは、松や杉の木、ゴールドクレストのようはコニファーなど、細くとがった葉を付ける樹木です。
寒さには強いタイプですが、強剪定を行うなら3~4月が適期です。新芽が出た頃に剪定することで、枝の伸びが良くなり美しい樹形を作れます。
落葉性広葉樹
ハナミズキやモミジ、梅といった落葉性広葉樹は、冬にはすっかり葉を落とします。葉が落ちている時期に剪定を行うと、状態が分かりやすいというメリットがあります。
特に12~2月頃は、木の幹に栄養が蓄えられているシーズン。剪定のダメージを最小限に抑えつつ、早めの回復が期待できます。
落葉性針葉樹
カラマツやメタセコイア、イチョウなどの落葉針葉樹は、寒さに強い樹木です。
ダメージを与えにくい冬の間に、強剪定を行いましょう。
12~3月の頃は、落葉針葉樹は葉を落としている時期。葉がないから枝を見やすく、剪定作業もスムーズに進められます。
なお、こちらの適期は目安となります。花を咲かせたり果実を目的とする場合には、適期はまた異なってきます。植物それぞれの性質や持ち主の目的に合ったタイミングで、強剪定を行ってくださいね。
次は、軽剪定について詳しく紹介していきます。
軽剪定とは?目的と剪定方法
軽剪定は、その名の通り軽い剪定です。「夏剪定」や「弱剪定」とも呼ばれ、樹木の形は変えない程度に、軽く枝葉を整えます。
透かし剪定も軽剪定の分類です。
暑い季節の剪定は、植木へのダメージとなります。そんな季節に行う剪定には、どんな目的があるのでしょうか?
軽剪定の目的と注意点
軽剪定の目的は、不要な枝を取り除くこと。不要な枝を放置しておくと、次のようなリスクが生じるからです。
・病気や害虫が発生しやすくなる
・花や果実が付きにくくなる
・強風で樹木が倒れたり傷ついてしまう
枝が混みあっていると樹木の内側の日当たりや風通しが悪くなり、内側の葉が枯れ、さらに病害虫が発生しやすくなります。
特に病気や害虫が起こりやすい夏は、風通しの良い環境づくりが大切です。
そして、不要な枝に栄養を奪われると、花や果実が生長しにくくなります。混みあった枝をすっきりさせることで樹木本来の元気な姿を取り戻せます。
さらに、枝が混みあっていると強風の衝撃を受けやすく、倒木の原因となることもあります。台風シーズンが到来する前に、軽剪定を行っておくと安心です。
ただし、夏場の樹木は基本的に体力が低下している状態です。太い枝をたくさん切ってしまうとダメージが大きくなり、回復できなくなる可能性もあります。軽剪定は慎重かつ繊細に、時期を選んで行いましょう。
軽剪定に適した時期
夏剪定と呼ばれるとはいえ、真夏の剪定には多少のリスクが伴います。たとえ軽剪定といえど、枝を切り取られることは樹木には負担がかかるからです。
軽剪定に適した時期も、樹木の種類や状態によって異なります。
常緑性広葉樹
一年中緑の葉を付けている常緑性広葉樹。軽剪定に適した時期は、6~10月頃です。
樹木にダメージを与えないように、伸びすぎた枝や葉を整える程度の軽い剪定を行います。
常緑性針葉樹
松やスギのように鋭くとがった葉を持つ常緑針葉樹は、9~11月頃の軽剪定を行うと良いでしょう。
こちらもあまり切りすぎないようにしましょう。
ただし、松の場合は枝の下の古い葉を手でしごく剪定、「もみあげ」 という剪定方法となります。
落葉樹
落葉樹の剪定は、適期というだけで、基本的には年中大丈夫ではありますが、2~4月または9~11月頃が適しています。
枝や葉が伸びてきたらその都度整えるのが理想です。
ただし、樹木へダメージを与えすぎないように、真夏の剪定は軽めにしましょう。
その他の剪定の種類と剪定方法
「枝を切る」とひと口にいっても、剪定の方法はさまざまです。
強剪定や軽剪定のほかにも、剪定にはいろいろな種類や呼び方があります。次は剪定の種類とその方法について、分かりやすく説明していきます。
樹木の種類や状態によって使い分けられる、枝の切りかたや剪定の方法には次のようなものがあります。
枝下ろし
チェーンソーやノコギリなどを使用して大きな枝を付け根付近から切り落とす剪定方法で、強剪定の一種です。
樹木の高さを調整したいときや、庭木が敷地からはみ出しているときなどに使用されます。庭の日当たりを改善したり、強風による倒木のリスクの軽減したりといったメリットもあります。
ただし、枝下ろし後の枝の切り口は、病気や害虫にむしばまれることがあるので注意が必要です。切り口を保護するために、癒合剤を塗ると良いでしょう。
切り戻し剪定・切り返し剪定
切り返し剪定・切り戻し剪定は、木の大きさや形を整えるための剪定です。枝下ろしとは違い、枝の根元ではなく途中で切り落とします。
切断面から新しく強い枝が伸びるので、樹木の生長促進につながる剪定方法。
そのため、適当にどこで切ってもいいわけではなく、枝のどの部分で切り落とすかが重要です。
新芽の1cmほど上あたりを切ると枝数が増やせます。
内側を向いている内芽と外側を向いている外芽がある場合は、外芽の上を切り落とします。内芽のすぐ上を切ると、上方向に向かって伸びる「立ち枝」になってしまうからです。
切り詰め剪定
切り詰め剪定は、枝の長さを短くする剪定です。伸びすぎた枝を小さくしたり、樹形を横方向に広げたりしたいときに行います。
枝の付け根ではなく新芽の少し上部で切り落とす点は、切り戻し・切り返し剪定と共通しています。
切り詰め剪定では、外芽のすぐ上を伸ばしたい方向に向かって斜めに切ることがポイントです。
生長する方向を見極めて剪定すれば、横方向への広がりを生かした自然な樹形に生長させられます。
切り詰め剪定は、シマトネリコ、ヤマボウシ、アオダモ、モミジ、エゴノキなど、雑木風の庭木を自然風の樹形に剪定する際に使用する方法です。
透かし剪定・枝抜き剪定
透かし剪定は、混みあった枝を間引くように切り取る剪定方法。「枝抜き剪定」とも呼ばれます。
切り取った場所が分かりにくいナチュラルな剪定方法で、日当たりや風通しを良くするために行います。
透かし剪定では、枝の付け根ぎりぎりの場所で切り落とします。
特に、立枝や逆さ枝、徒長枝(とちょうし)などに対して行います
図の解説 枝の途中で切ってしまうと、枝が生長した際にかえって混みあってしまうからです。
枝分かれした枝は、分岐点に近い場所で一方だけを切り落とすことが一般的です。
不要枝とは?剪定の対象となるのはこんな枝
樹木にとって不要な枝「不要枝」は、剪定の対象となる枝です。
図のように、不要枝にもいろいろな種類があります。
立ち枝
横に広がるべき枝が高く伸びてしまったものを立ち枝といいます。樹形を損ねるため、剪定の対象となります。
かんぬき枝
かんぬき枝とは、主幹の同じ高さのところから左右対称に伸びた枝です。かんぬきのように見えることから、この名前が付きました。
不要枝とされるのは、やはり樹形を損ねるため。かんぬき枝を見つけたら、左右どちらかの枝を根元から切り落としましょう。
交差枝
交差枝は別の枝に交差するように出た枝を指します。絡むように伸びるため「からみ枝」とも呼ばれます。
交差枝はほかの枝の生長を妨げるため、不要枝とみなされます。根元から切り落としてしまいましょう。
徒長枝(とちょうし)
徒長枝とは徒(いたずら)に伸びた枝。「忌み枝」や「暴れ枝」との別名もあります。枝の途中から上向きに生え、威勢の良いのが特徴です。
徒長枝があると植木の通気性が悪くなりますし、見た目も良くありません。主幹や主枝から栄養を奪うこともあるため、剪定の対象となります。
車枝
車枝とは、一か所から数本出る枝のことです。
特に下手な剪定をするとこのような枝が多く出てきます。
逆さ枝
ほかの枝とは逆の方向に伸びた枝を、逆さ枝といいます。逆さ枝は樹形を乱すので、根元から切り落としてしまいましょう。
ヤゴ・ひこばえ
ヤゴとは、樹木の根元から生えている枝のこと。ひこばえと呼ばれることもあります。
ヤゴは見た目が良くないだけでなく、木の幹から栄養を奪ってしまいます。脚を引っかけて転んでしまうこともあるため、根元から切ってしまいましょう。
胴吹き枝
樹木の胴にあたる幹の途中から伸びた枝を、胴吹き枝といいます。
胴吹き枝があると木の上部へ栄養が回らなくなってしまうため、剪定の対象となります。
下がり枝
横に伸びた枝から、下方に向かって伸びている枝のこと。「垂れ枝」とも呼ばれます。
下がり枝は樹形のバランスを崩すため、根元から切り落としましょう。
ふところ枝
樹木のふところ、つまり内側に向かって伸びる枝です。日当たりや通気性が悪くなるため、剪定の対象となります。
必要な枝だけ残し、根元から切り落としましょう。
平行枝
平行枝とは、2本以上の枝が並んで伸びている枝を指します。下のほうの枝に日当たりが悪くなるため、剪定の対象となります。
上記の不要枝のほかにも、病害虫に侵された枝や前回の剪定時に切り残した部分など、植木の生長の妨げとなる枝は取り除いていきましょう。
刈り込みと剪定の違いとメリット・デメリット
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不要な枝を取り除く剪定は、樹木を美しく健康に保つために行われますが、剪定とよく似た作業に「刈り込み」があります。刈り込みと剪定では、どのような違いがあるのでしょう?
刈り込みとは、伸びた枝や葉を刈って見た目を整えることです。生垣や、テーマパークによくあるキャラクター形のトピアリーなどは、刈り込みの技術で作られています。
刈り込みには、樹木の生長を促したり、病害虫を防いだりする効果はありません。それでは刈り込みにはどんな目的があるのでしょう?
刈り込みの目的と注意点
刈り込みの目的は、植木の輪郭を整えることです。
見た目の美しさだけを追求する作業ですから、剪定のように芽の方向などは考慮せずに行います。
そのため比較的知識や経験が無くても行えるのは、刈り込みのメリットといえるでしょう。
しかし、刈り込みだけでは樹形や樹木の健康を保つことはできません。数年に一度は剪定が必要となります。
というのは、刈込ばさみやトリマーなどで行う刈り込みでは、剪定ほど植木を小ぶりに仕立てられないからです。
また、刈り込みでは枝を透くことは行わないので、風通しが悪くなり病害虫の発生を招いてしまうこともあります。
生垣の場合は、目隠しを目的とする場合がほとんどですので、風通しを良くして病害虫を防ぐことと、目隠しは矛盾してしまいます。どちらの目的が優先なのかを判断して剪定方法を決めましょう。
刈り込みに適した時期はいつ?
生垣を美しく保つには、年に2~3回の刈り込みが理想的です。
刈り込みに適した時期は樹木の種類によって異なりますが、基本的には真夏と真冬の刈り込みはダメではありませんが避けて、春や秋に行うのがベストでしょう。
常緑樹なら花の後の5~6月頃と枝の生長が落ち着き始める9~11月頃の年に2回の刈り込みがおすすめです。
コニファーやツゲ、マキの木などの常緑の針葉樹を刈り込むなら9~11月頃、落葉の針葉樹なら11~3月頃の、葉の落ちた後の刈り込みがベストです。
まとめ
剪定は、植木の見た目を整えるだけでなく、樹木の生長を促したり病害虫を予防したり、花や実の生りを促したりできる大事な作業です。
樹木にとっては負担となる作業でもあるため、樹木の種類や状況に合わせた剪定方法や時期を選ぶ必要があります。
大切な植木の健康と、素敵なお庭を保つために、最適な剪定方法を選んでくださいね。
樹形を乱したり、形を悪くしたくなければ、プロの庭師さんに依頼しましょう。