剪定とは、樹木の枝を切り落としたり葉先を揃えたりする作業です。

植木の散髪のように、見た目だけの問題のイメージがあるかもしれませんが、剪定は樹木の健康にも影響を与える大切な役割も担っています。

大胆に枝を切り落とす「強剪定」や繊細な作業となる「軽剪定」など、剪定の種類はさまざまあり、それぞれに応じた適した季節も異なります。

この記事では剪定方法の種類別に、目的と注意点、そして各種剪定方法に適した時期を紹介していきます。

剪定とはどのような作業?

剪定とは、植物(主に樹木)の枝や葉、幹などを切り取ることで、樹形を整えたり日当たりや風通しを良くしたりする作業です。
不要な枝を減らすことで、樹木全体に日光が届き、風が通りやすくなります。これにより、病害虫の発生が予防されて良好な生育が促進されます。
剪定は、樹種や目的に応じて適切な時期に行わなければなりません。そうしないと、樹木は本来の生育状態を保持できず、花や実をつけることができなくなったり枯れてしまったりすることがあります。

庭木を剪定するタイミング

庭木の剪定を成功させるためには、その庭木に合ったタイミングで剪定することが重要です。
庭木は、常緑樹、針葉樹、落葉樹など種類によって剪定時期は異なりますが、冬季(12~3月)の休眠期と、夏季(5~6月)の年2回行うのが一般的です。

冬季剪定

樹形を整えたり、古い枝や枯れ枝を整理したりして、春の生長に備えます。

夏季剪定

伸びすぎた枝葉を整理し樹形を整えるとともに、通気性や日当たりを改善して病害虫を予防するのが目的です。
適切でないタイミングの剪定は、庭木の生育サイクルを乱して、本来の開花や結実をできなくさせたり枯らしてしまったりすることがあります。
花のつく庭木の剪定のタイミングをまとめました。

旧枝咲き

前年伸びた枝に翌年の花芽がつく旧枝咲きの剪定は、花が咲き終わった直後が基本です。ただし、花が咲く時期は品種によって違うので注意が必要です。

旧枝咲きの庭木の例

アジサイ、クレマチス、ライラック、ヒメウツギなど

新枝咲き

その年の春に新しく伸びた枝に花芽をつける新枝咲きは四季咲き性が強いので、花後すぐに剪定することで、株元から新しい枝が伸びて再び花が咲きます。

新枝咲きの庭木の例

バラ、アナベル(アメリカアジサイ)、ノリウツギなど

アジサイやバラ、クレマチスなどは品種が非常に多く、品種により花の咲き方に違いがあるので事前のチェックが欠かせません。

庭木の剪定は大きく分けると2種類

剪定にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると次の2種類です。

  • 強剪定
  • 軽剪定

強剪定は「基本剪定」や「冬剪定」とも呼ばれ、主に寒い時期に行われます。

一方、軽剪定は別名「夏剪定」といい、暑い時期に行われることが一般的です。

なお、勘違いされる方が多いのですが、上記は適期というだけであって、春や秋にはどちらの剪定方法も可能です。

まずは強剪定について、詳しく解説していきます。

強剪定(基本剪定)とは?目的と剪定方法

強剪定とは、大きな枝を切り落としたり、場合によっては幹を切ったりもする比較的大胆な剪定です。

よく冬や春先に街路樹が枝をバッサリ切り落とされていることがありますが、あれは強剪定を施されたもの。

剪定後の姿が以前と大きく変わるのは、強剪定の特徴のひとつです。

太い枝を多く切り落とすため、強剪定後の樹木には大きな切り口がたくさんできてしまいます。葉がほとんど残りません。

つまり強剪定は、樹木にとっては外科手術ともいえる、大きなダメージとなる作業といえるでしょう。

樹木にとってストレスとなりそうな強剪定を行うのは、どんな目的があるからでしょうか?

強剪定の目的と注意点

強剪定は、次のような目的で行われます。

  • 樹木の高さや形を調整する
  • 栄養を全ての枝にいきわたらせる
  • 生育を促進する

植木が大きくなりすぎて見映えが悪くなったり、道路にはみ出して近所迷惑になったりするときは、強剪定で高さや大きさを調整します。

また、枝が多くなりすぎると栄養が樹木全体にいきわたりません。不要な枝を定期的に取り除くことで、樹木は健康になり、花や果実がしっかり育ちます。

しかし、不要な枝とはいえ多くの枝を切り落とされる強剪定は、樹木にとっては負担の多い作業。切り口から病気や害虫が入り込むことも考えられるため、傷口を回復するための体力がある時期に行うことが鉄則です。

強剪定に適した時期

樹木への負担が大きな強剪定は、基本的には冬に行います。なぜなら、冬は植物にとって休眠期、つまり、あまり生長しない時期だからです。

休眠期なら大胆な剪定を行っても樹木に大きなダメージ与えずにすみ、傷口の回復も早くなります。

とはいえ、冬ならいつでも適期なわけでもありません。強剪定に適した時期は、樹木の種類によって異なります。

常緑性広葉樹

カシノキやツバキ、オリーブの木、キンモクセイのような常緑性広葉樹は、寒さに弱い植物です。真冬に強剪定を行うと、ダメージから回復できずに枯れてしまうことがあります。

常緑性広葉樹の強剪定は、新芽が出始める3~4月頃、または新芽が落ち着いた5~6月頃に行いましょう。

常緑性針葉樹

常緑性針葉樹とは、松や杉の木、ゴールドクレストのようはコニファーなど、細くとがった葉を付ける樹木です。

寒さには強いタイプですが、強剪定を行うなら3~4月が適期です。新芽が出た頃に剪定することで、枝の伸びが良くなり美しい樹形を作れます。

落葉性広葉樹

ハナミズキやモミジ、梅といった落葉性広葉樹は、冬にはすっかり葉を落とします。葉が落ちている時期に剪定を行うと、状態が分かりやすいというメリットがあります。

特に12~2月頃は、木の幹に栄養が蓄えられているシーズン。剪定のダメージを最小限に抑えつつ、早めの回復が期待できます。

落葉性針葉樹

カラマツやメタセコイア、イチョウなどの落葉針葉樹は、寒さに強い樹木です。

ダメージを与えにくい冬の間に、強剪定を行いましょう。

12~3月の頃は、落葉針葉樹は葉を落としている時期。葉がないから枝を見やすく、剪定作業もスムーズに進められます。

なお、こちらの適期は目安となります。花を咲かせたり果実を目的とする場合には、適期はまた異なってきます。植物それぞれの性質や持ち主の目的に合ったタイミングで、強剪定を行ってくださいね。

次は、軽剪定について詳しく紹介していきます。

軽剪定とは?目的と剪定方法

軽剪定は、その名の通り軽い剪定です。「夏剪定」や「弱剪定」とも呼ばれ、樹木の形は変えない程度に、軽く枝葉を整えます。

透かし剪定も軽剪定の分類です。

暑い季節の剪定は、植木へのダメージとなります。そんな季節に行う剪定には、どんな目的があるのでしょうか?

軽剪定の目的と注意点

軽剪定の目的は、不要な枝を取り除くこと。不要な枝を放置しておくと、次のようなリスクが生じるからです。

  • 病気や害虫が発生しやすくなる
  • 花や果実が付きにくくなる
  • 強風で樹木が倒れたり傷ついてしまう

枝が混みあっていると樹木の内側の日当たりや風通しが悪くなり、内側の葉が枯れ、さらに病害虫が発生しやすくなります。

特に病気や害虫が起こりやすい夏は、風通しの良い環境づくりが大切です。

そして、不要な枝に栄養を奪われると、花や果実が生長しにくくなります。混みあった枝をすっきりさせることで樹木本来の元気な姿を取り戻せます。

さらに、枝が混みあっていると強風の衝撃を受けやすく、倒木の原因となることもあります。台風シーズンが到来する前に、軽剪定を行っておくと安心です。

ただし、夏場の樹木は基本的に体力が低下している状態です。太い枝をたくさん切ってしまうとダメージが大きくなり、回復できなくなる可能性もあります。軽剪定は慎重かつ繊細に、時期を選んで行いましょう。

軽剪定に適した時期

夏剪定と呼ばれるとはいえ、真夏の剪定には多少のリスクが伴います。たとえ軽剪定といえど、枝を切り取られることは樹木には負担がかかるからです。

軽剪定に適した時期も、樹木の種類や状態によって異なります。

常緑性広葉樹

一年中緑の葉を付けている常緑性広葉樹。軽剪定に適した時期は、6~10月頃です。

樹木にダメージを与えないように、伸びすぎた枝や葉を整える程度の軽い剪定を行います。

常緑性針葉樹

松やスギのように鋭くとがった葉を持つ常緑針葉樹は、9~11月頃の軽剪定を行うと良いでしょう。
こちらもあまり切りすぎないようにしましょう。

ただし、松の場合は枝の下の古い葉を手でしごく剪定、「もみあげ」 という剪定方法となります。

落葉樹

落葉樹の剪定は、適期というだけで、基本的には年中大丈夫ではありますが、2~4月または9~11月頃が適しています。
枝や葉が伸びてきたらその都度整えるのが理想です。

ただし、樹木へダメージを与えすぎないように、真夏の剪定は軽めにしましょう。

その他の剪定の種類と剪定方法

「枝を切る」とひと口にいっても、剪定の方法はさまざまです。

強剪定や軽剪定のほかにも、剪定にはいろいろな種類や呼び方があります。次は剪定の種類とその方法について、分かりやすく説明していきます。

樹木の種類や状態によって使い分けられる、枝の切りかたや剪定の方法には次のようなものがあります。

枝下ろし

枝おろし

チェーンソーやノコギリなどを使用して大きな枝を付け根付近から切り落とす剪定方法で、強剪定の一種です。

樹木の高さを調整したいときや、庭木が敷地からはみ出しているときなどに使用されます。庭の日当たりを改善したり、強風による倒木のリスクの軽減したりといったメリットもあります。

ただし、枝下ろし後の枝の切り口は、病気や害虫にむしばまれることがあるので注意が必要です。切り口を保護するために、癒合剤を塗ると良いでしょう。

切り戻し剪定・切り返し剪定

切り返し剪定・切り戻し剪定は、木の大きさや形を整えるための剪定です。枝下ろしとは違い、枝の根元ではなく途中で切り落とします。

切断面から新しく強い枝が伸びるので、樹木の生長促進につながる剪定方法。

そのため、適当にどこで切ってもいいわけではなく、枝のどの部分で切り落とすかが重要です。

新芽の1cmほど上あたりを切ると枝数が増やせます。

内側を向いている内芽と外側を向いている外芽がある場合は、外芽の上を切り落とします。内芽のすぐ上を切ると、上方向に向かって伸びる「立ち枝」になってしまうからです。

切り詰め剪定

切り詰め剪定は、枝の長さを短くする剪定です。伸びすぎた枝を小さくしたり、樹形を横方向に広げたりしたいときに行います。

枝の付け根ではなく新芽の少し上部で切り落とす点は、切り戻し・切り返し剪定と共通しています。

切り詰め剪定では、外芽のすぐ上を伸ばしたい方向に向かって斜めに切ることがポイントです。

生長する方向を見極めて剪定すれば、横方向への広がりを生かした自然な樹形に生長させられます。

切り詰め剪定は、シマトネリコ、ヤマボウシ、アオダモ、モミジ、エゴノキなど、雑木風の庭木を自然風の樹形に剪定する際に使用する方法です。

透かし剪定・枝抜き剪定

透かし剪定は、混みあった枝を間引くように切り取る剪定方法。「枝抜き剪定」とも呼ばれます。

切り取った場所が分かりにくいナチュラルな剪定方法で、日当たりや風通しを良くするために行います。

透かし剪定では、枝の付け根ぎりぎりの場所で切り落とします。

特に、立枝や逆さ枝、徒長枝(とちょうし)などに対して行います

図の解説 枝の途中で切ってしまうと、枝が生長した際にかえって混みあってしまうからです。

枝分かれした枝は、分岐点に近い場所で一方だけを切り落とすことが一般的です。

刈り込み

剪定の中でも、刈り込みは庭木の輪郭を均一に切り揃える作業のことで、生垣やツゲ、ツツジなど表面を整えることで形がはっきりする庭木で行うことが多いです。
また、刈り込みは、芽が出て枝が伸びやすく葉が密集しやすい常緑樹に向いています。
庭木の全体的な形や見た目を整えるために、刈り込みばさみやヘッジトリマーを使って、葉や枝の外側を均一に切り揃えます。下から上を心がけて刈り込んでいくのが、上手くやるコツです。

不要枝とは?剪定の対象となるのはこんな枝

剪定の対象となる不要枝の種類と特徴をまとめました。

不要枝の種類特徴
立ち枝真上に向かって伸びる枝のことで、樹形を乱し、養分を無駄に消費する原因になる。
かんぬき枝樹木の幹の同じ高さから左右またはお互いに反対方向に生える2本の枝のこと。樹形を乱し、枝元がこぶ状に膨らむことがある。
交差枝枝同士がぶつかり合ったり、絡み合ったりしている枝。枝葉が擦れて傷つく原因になる。
徒長枝(とちょうし)枝の途中から真上に長く伸びた枝。折れやすく、害虫の温床になりやすい。
車枝一ヶ所から何本もの枝が車輪のように放射状に生えている枝。枝が混み合い、樹形や風通しが悪くなる。
逆さ枝本来の伸びる方向とは逆の、幹や株元に向かって伸びる枝。
ヤゴ・ひこばえ木の根元や地面から勢いよく伸びる枝。樹形を乱し、本体の養分を奪う。
胴吹き枝幹の途中から直接伸びる細い枝。養分を奪い、樹形を乱す。
下がり枝横に伸びた枝から、さらに下方に向かって伸びる小枝。
ふところ枝幹や太い枝の付け根から樹木の内側に向かって伸びる枝。日当たりや風通しを悪くする。
平行枝複数の枝が同じ方向、同じような太さで平行に伸びている枝。下部の枝の日当たりや風通しを悪くする。
不要枝一覧表

不要な枝を取り除くことは、樹形を整え自然な美しい形を保ち、全体の日当たりや風通しを確保して病害虫の予防に繋がります。また、折れやすい枝を除去することになるので、安全性が高まります。

剪定を行うときのポイント

自分で剪定を行うときのポイントは、剪定すべき枝を見極め、適切な位置で切ることです。切るときの順序や切り方も大切で、道具をうまく使うコツを覚えておくと上手くいきます。
プロもやっている、剪定を行うときのポイントを紹介します。

枝の見方と切る順序

剪定すべき枝を見極めるには、庭木から少し離れて、密集している枝や樹形を乱している枝がないか確認します。このとき、一つの方向だけでなく、多方向から見ると分かりやすいです。
不要な枝を切る順序は、理想の樹形をイメージしながら上から下へ切り進めていくと、庭木の上部の枝が邪魔にならず作業しやすくなります。
枯れているか分からない枝は、枝を少し削ってみてください。生きている枝は、削った部分がみずみずしく、枯れていれば乾いていて水分がありません。

枝を切る位置と切り方

剪定は、枯れ枝や幹に向かって伸びる内向きの不要な枝を切り落とすのが基本です。
枝を切り落とすときは、枝の外側に向いている芽の5~10mm上あたりを、水平またはやや斜め上を意識して切り落とすと、枝が真上に伸びる「立枝」の発生を防ぐことができます。
太い枝は、一度に無理して切ると、切り口が傷んだり折れたりする原因になるので注意が必要です。
まず切りたい位置の少し手間に下から切り込みを入れ、さらに上から切り込みを入れてから、枝の重みで枝が折れた後に残った部分をキレイに切り落とすのがコツです。

枝を切る道具の使い方

剪定を効率的に行うために、代表的な道具と使い方のコツをまとめました。

  • 剪定ばさみ|切り刃を手前にして枝葉を奥へ押し込むように回して切る
  • 剪定ノコギリ|剪定する枝を片手でしっかり支えて動かないようしてノコギリを引く
  • 刈込ばさみ|片方の手を柄の中ほどで固定し、もう一方でハンドルを動かして使う
  • 高枝剪定ばさみ|ハサミ状の刃に枝を挟んだら、刃を動かすヒモやグリップを一気に引く

刈込ばさみは、使い方に慣れるまで時間がかかります。刃の入る深さを一定にすること、細い枝は刃先で、太い枝は刃元で切ることを覚えておくだけでも大きな失敗はないはずです。

剪定はプロに依頼がおすすめ

大切な庭木を良好に保つなら、剪定はプロに依頼することをおすすめします。
特に、大きな庭木や扱いが難しい庭木がある、庭木の数が多いなどの場合は、プロの技術や経験、迅速な剪定による効率的で安全な剪定が必要です。
プロに剪定を依頼するなら、「smileガーデン」をぜひ検討していただきたいです。
smileガーデンは、全国チェーンの利便性、中間マージンをなくした良心的な価格、経験豊富なプロの確かな技術が高く評価されています。

まとめ

剪定は、植木の見た目を整えるだけでなく、樹木の生長を促したり病害虫を予防したり、花や実の生りを促したりできる大事な作業です。

樹木にとっては負担となる作業でもあるため、樹木の種類や状況に合わせた剪定方法や時期を選ぶ必要があります。

大切な植木の健康と、素敵なお庭を保つために、最適な剪定方法を選んでくださいね。

樹形を乱したり、形を悪くしたくなければ、プロの庭師さんに依頼しましょう。