移植とは植物を移動させることです。

根元に穴を掘って植替えれば良いだけのような気もしますが、実は移植は植木にとって生死のかかった命がけの作業。移植したことが原因で、枯れてしまう植木も珍しくありません。

そして、移植ができる庭木には一定の条件があります。

この記事では移植ができる条件について説明し、移植の方法と作業の流れを紹介していきます。

また、庭木の移植に伴うリスクについても分かりやすく解説していきます。

庭木の移植をお考えなら、ぜひ参考にしてみてくださいね。

移植とは、庭木を移動させ植え替えること

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移植とは、植物を植えてある場所から違う場所へ移動させること。いわば植木の引っ越しです。

庭のレイアウトを変えたり、リフォームしたりしたいときに行われることが多いでしょう。

また、庭木が育って密になりすぎていているときには、より良い環境に移動させてあげたいと考えるかもしれません。

たとえば庭木の根が土からはみ出しているのは、土の中で根がつまって広がる余裕がない状態です。そのままでは生長が止まってしまうこともあるため、移植が必要とされることもあります。

鉢植えの観葉植物なら、移植は簡単に行えます。根ごとスポンと鉢から抜いて、移動先の鉢に植え替えるだけで完了です。

でも、庭木の移植は非常に困難な作業といえます。移植できるための条件が厳しいうえに、庭木が枯れてしまうリスクが伴うからです。

まずは移植に必要な条件をチェックして、移植が可能かどうかを確認してみましょう。

まずは確認。移植が可能な条件とは?

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移植を検討しているなら、まずは移植に必要な条件がそろっているか確認してみましょう。

ひとつめの条件は、移植したい庭木の周囲が広く土の状態になっていることです。

幹の直径の3~5倍が土の状態になっていること

少なくとも根元の直径の3~5倍の面積が、土の状態でないと、庭木の移植はできません。

移植に必要な「掘り取り」という作業ができないからです。

掘り取りとは、文字通り庭木を掘って取り出すこと

庭木が広く伸ばした根を切り落とし、根鉢だけを残した状態にします。

根鉢とは、根が土を抱えるように塊になっている部分。

根鉢は幹の直径の3~5倍の範囲に広がっています。

根鉢を掘り出すためには、幹の直径の6~7倍の面積が土の状態でないと、掘り取りは行えません。

たとえば20cmの幹なら、幹を中心に半径60cm~70cmは土になっている必要があります。

その部分にコンクリートやブロックが敷いてあったり、門塀が設置されていたりする場合は、建造物を壊さない限り移植は不可能です。

クレーン車が入れること

移植に必要となるもうひとつの条件は、移動させる庭木の周辺にクレーン車が入れることです。

というのは、庭木には意外と重量があるからです。

細く見える庭木でも、地中には大きな根鉢を抱えています。

根元の幹の直径が10cmで高さは3mほどの小ぶりな庭木でも、重量はおよそ150kg。人力での運搬は不可能でしょう。

このため、クレーン車の入るスペースがない場所や、クレーン車の届かない場所に立っている庭木の移植はできないのです。

根元が広く土の状態で、クレーン車も入れる場所に立っている庭木なら移植は可能です。

とはいえ、移植には庭木が枯れてしまうリスクが付きまといます。

移植を依頼する前に、庭木の植替えに伴うリスクを理解しておきましょう。

移植で植木が枯れるリスクを理解しよう

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どんなに気を使って作業しても、移植がきっかけで植木が枯れてしまうリスクはゼロにはできません。

植木が枯れてしまう大きな原因は、移植の際に根の大部分を切り落としてしまうことにあります。

移植で植木が枯れる理由

通常植木は、地上に張っている枝と同じくらいの大きさの根を、地中に張り巡らせています。

植物にとっての根は、水分や栄養を吸収する大切なライフラインです。植木は生きるために根を大きく広げています。

それなのに、移植が決まると植木の根の大部分は切り落とされてしまいます。

根鉢だけは残されるとはいえ、植木にとってはライフラインの大半を失うことになるでしょう。

そのため、植木が吸収できる水分や栄養は極端に少なくなり、植木が枯れる原因となるのです。

リスクを軽減するための「根巻」と「剪定」

植木が枯れてしまうリスクを軽減されるために、とられる対策もあります。

たとえば「根巻」もそのひとつ。根巻とは、根鉢を麻布で巻く作業です。

根に付着した土を崩さないように麻布で包み込むことで、植木が水分や栄養分を保てるように施されます。

そして移植のための剪定も、植木が枯れるリスクを避けるために取られる対策です。

移植の前に剪定が必要なのは、葉が付いていると植木は水分をどんどん失ってしまうからです。

樹木は、葉で光合成や蒸散を行うことで、葉から水分を蒸発させています。

植木に根がある状態なら、水分使用量よりも水分吸収量が多くバランスが取れるのですが、移植のために根を切ってしまうと水分吸収量が極端に少なくなります。

そのため、水分吸収量よりも水分使用量のほうが大きく上回り、バランスが崩れてしまうのです。

つまり移植をする前の剪定は、植木の水分使用量を下げるために、できるだけ植木の葉を減らす作業といえます。

とはいえ、根巻や剪定をどんなに丁寧に行っても、根を切られた植木が吸収できる水分や栄養が著しく減ることは避けられません。

また、移植された植木が新しい根を出して根付くまでには時間がかかるため、その間に弱ってしまうこともあります。

そのリスクを避けるためにとられる対策が「根回し」です。

「根回し」は植木を安全に移動させるための必須作業。ですから移植と根回しは、基本的にセットで行われます。

移植前の「根回し」は必須作業

根回しとは、移植のための根を切ることです。

移植する庭木の根元の周囲を掘り、主な根以外の大部分を切り落とします。

根切りにはリスクが伴うと説明しながら、根回しを推奨するのは矛盾しているように思われるかもしれません。

でも、根回しは植木を守るために行われる作業です。

というのは、切り落とされたり皮をむかれたりして傷をつけられると、根はそこから細根を伸ばすからです。

根鉢付近の根にわざと傷をつけ、根鉢の周りに細根をたくさん発生させることが根回しの目的。

根回しを行っておくことで、根鉢だけの状態になっても植木は水分や栄養をある程度吸収できるのです。

さらに細根が吹いていると、移動先に植え替えられてからの植木は比較的短期間で根を張ります。

そのため植木の枯れるリスクを軽減でき、安全な移植が可能になるのです。

でも、たとえ根回ししたとしてもすぐに移植できるわけではありません。根回しは移植の数カ月前に行っておく必要があります。

次に、移植の方法と流れについて詳しく解説していきます。

庭木の移植の方法と流れを詳しく解説

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まずは、庭木を移植する際の流れを簡単に紹介します。

① 移植する半年以上前に根回しを行う
②移植のための掘り取りと根巻きを行う
③クレーン車やトラックで庭木を移動させる
④庭木を移植先に植え付ける

それぞれ詳しく解説していきます。

①根回しを行う

根回しは、移植の数カ月~1年前に始めておく必要があります。

早い樹種なら根回しから2週間ほどで移植可能にはなりますが、数カ月待って細根をしっかり出させてからのほうが安全です。

根回しでは、幹の直径の3~5倍の根回りを20cmくらいの幅で掘り下げます。そして太い根を3~4本だけ残し、ほかの根は溝の内側ですべて切ってしまいます。

さらに、残った根の見えている部分の皮をはぐのは、そこから細根を出すためです。

根鉢の2/3くらいまで掘り下げたら、元のように土を戻しましょう。

根回しから数カ月後には、切った根の先と皮をはいだ部分から細根が出てきているはずです。

②掘り取りと根巻きを行う

根回しから数カ月~1年が経過したら、掘り取りと根巻を行いましょう。

根鉢の周りを重機で掘ってから、スコップやノコギリで根を切ります。

根鉢を土から分離させたら、飛び出ている根をカットして形を整えます。

根鉢から土が落ちないように麻布で包み、麻縄をグルグル巻けば根巻は完了です。

③庭木を移動させる

無事に掘り取りが終わったら、植木を移動させましょう。

移植の対象は大きく育った植木がほとんどで、重量は何百キロになります。

人間が持ち上げることは不可能なため、重機を利用することが一般的です。

ユニック車やラフタークレーンといったクレーン付きのトラックで持ち上げて、植替え先まで運びましょう。

④移植先に植え付ける

新しく植え替える場所には、根幹より一回り大きく穴を掘っておきましょう。

植え込みには、土と堆肥を混ぜた腐葉土(客土)を使用します。

穴の真ん中に植木を入れたら、地面より少し高くなるまで土を盛っていきます。

このときに、水と土を交互に入れてドロドロの状態にすることがポイント。

というのは、ドロドロの状態なら土が根の隙間に入りやすくなるからです。

地面より少し高くなるまで土を盛れたら、幹の周囲を棒などで突いて固めて作業完了です。

移植させられた植木が根を伸ばし、元気に根付いてくれることを祈りましょう。

庭木の移植はもっとも困難な造園工事

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庭木の移植はもっとも困難な造園工事といわれます。

移植が可能な条件のハードルは高く、作業にはリスクが伴うからです。

庭木の根は大きく育っているため、掘り起こすには木の周囲を広く掘る必要があります。

掘るにも移動させるにも重機は必要で、人力だけでは不可能です。

庭木の生命線である根を切ってしまうから、枯れてしまうリスクも付きまといます。

根巻や剪定、根回しを行えばリスクを軽減できるとはいえ、植木の移植に伴うリスクはゼロにはできないのが現状です。

庭木にとって、移植は枯れてしまうリスクを伴う命がけの作業。

移植を依頼する前にリスクをしっかり確認し、信頼できる業者に相談してみましょう。